子どもを放射能からまもる会in千葉
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表面汚染密度(β線)と放射能濃度(γ線)

いわゆるパンケーキ型GM管を使用した線量計と一般的な線量計の違いについて以前の記事でInspectorを例に説明しました。
パンケーキ型GM管を使用した線量計の中には線量当量(μSv/h)の他に「表面汚染密度」(Bq/cm2)を計算、表示する装置もあります。(右下の写真のRadEye B20/ B20ERはその1例です)

今回寄せられたご質問は
「RadEyeで土壌表面を測定した表面汚染密度(Bq/cm2)と実際に土壌を採取して土壌放射能濃度(Bq/kg)を測定し平米に換算(Bq/m2)した値が違う」というものです。

images.jpg 2RadEye-B20.jpg
パンケーキ型GM管(マイカ膜無し)   GM管サーベイメーター RadEye B20

結論を先に言うと「面積と体積の違い」で同じ量として比較できないというのが結論ですが、なぜ同じセシウムが出すγ線とβ線の計測結果が異なるのか、それだけでは身も蓋もないので若干説明を追加します。
surface.png

言葉の定義についてβ線、γ線などの基礎知識からはじめるととても終わらないのと、ネット上には田崎先生の「やっかいな放射線と向き合って暮らしていくために」など無償で入手できる良書がありますので、そちらをご参照いただくとして、さわりにどどめます。

 実体質量貫通力飛程単位
β線荷電粒子(電子)あり弱い 2㎜のアルミ板でほとんど遮蔽1mcpm
γ線電磁波なし強い コンクリート壁、鉛遮蔽必要100mcpm
Sv/h
※cpm 1分間当たりのカウント数 秒単位ならcps 
飛程 セシウム134,137での例

β線の飛程(最大で届く距離)についてはSPVIEWERの作者であるみかげさんの一覧と計算ツールが公開されていますが、これを見ると密度が「1」の水中や土中では 3MeV以上の高エネルギーβ線でも数cmしか届かないことが判ります。誤解されると困るのですが「β線は安全」ということでなく「測るのがとても難しい」ということです。

β線の飛程の計算ツール


表面汚染密度の測定についてはJIS Z4045 というそのものズバリの規格があります。

JIS-Z 4045 2008 放射性表面汚染の測定方法 β線放出核種(最大エネルギー0.15 MeV以上)及びα線放出核種

JIS-Z4045には直接測定法、間接測定法(拭き取り試験法)がありますが、実は前回取り上げたInspectorのwipe test plateはβ線遮蔽のためでなく本来は拭きとり試験に用いるものだと思います。

表面汚染密度(β放射性物質はすべて表面にあり「厚み」がないものとして考えるBq/cm2面積2次元情報
放射能濃度 (γ線放射性物質はある大きさの体積(重量)の中に分散していると考えるBq/kg Bq/m3重量
体積
3次元情報
γ線の場合も試料(土壌)そのものとの相互作用による散乱や自己吸収によって減弱するので10Bq 、20Bqといった食品に含まれるセシウムを定量する場合には補正が必要ですが、β線は桁違いに大きな影響を受けます。(実はこれ以外にも壊変における分岐比や装置の検出効率などやっかいな問題がありますが、今回は省略します)
geometry.jpg
左の図は容器に充填された試料と検出器(NaIシンチレーター)との幾何的な関係(ジオメトリ)を表したものですが、直感的に検出器から遠い部位にある放射線源からのγ線は散乱、自己吸収の影響がより大きくり検出するのが難しいことが判ります。

上の図の「箱に詰めたピンポン玉」の例でも最下層にある放射線源から放射されるβ線を検出するのはさらに難しいことが想像できます。


文科省「放射能測定シリーズNo.1 全ベータ放射能測定」では試料を乾燥または電気炉で灰化して体積を減じ薬剤で固定し試料皿に広げて測定する事が推奨されています。

文科省全ベータ放射能測定法

余談ですが、よく「スペクトルの出ないGM管で食品の汚染が測れるわけがない」という話がでますが、「全ベータ放射能測定」には食品、飲料水、牛乳などの測定例があり、実は測れると言って良いのです。
(γ線を検出してBq量を求める食品検査器にもLB200のようにシングルチャンネル型のスペクトルが出ない装置もあります)

ただし上記の様に乾燥させたり、電気炉で灰化した上で薬品や樹脂で固着させ散乱、自己吸収の影響を少なくする前処理が必要で、測定精度はほとんど前処理方法の良否によって決まると言っても過言ではないようです。

RadEyeでの測定の実際

① 畑の中心の1mの高さでRadEyeが検出しているのは主にγ線(β線は空気中で減衰してしまう)=これをバックグラウンドとして記憶させる。          
            
② 地表に置くとγ線とβ線の両方を検出  (γ+β) - バックグラウンド = β線
 
現在放射性セシウムは地表0~3cmくらいにあると言われていますが、この時検出しているのは地表付近のβ線だけで、上記の理由により表面近くにあるセシウム以外のβ線は地表まで届かないので得られるのは「土壌の表面の汚染」ということになります。

したがってRadEyeなどβ線表面汚染計で測った「表面汚染密度」と「土壌濃度」とは直接対応しないし、JIS Z4045や「全ベータ放射能測定」で規定された直接試験法とも異なるのでそれ自体の数値を絶対値として比較することも出来ません。

case_study.jpg


食品にRadEyeをあてて判るのはあくまでも表面にある核種であり中まで調べるにはミキサーでつぶしてゲルマニウム半導体検出器やNaIシンチレーターでセシウムの出すγ線を数えるか、β線表面汚染計で測るなら上記のように電気炉で灰にして体積を減らして薄く均一に広げ、検出部と線源の距離を一定に保つなどの操作が必要です。(逆に言えば「コンクリートの上に薄く広がった乾燥した土壌」の場合周囲より高いβ線の計数率を示す可能性があるかもしれません)

念のためですが、RadEye B20/ B20ERやINSPECTORがいい加減な装置ということではなく、β線を定量的に測定する事や数値を評価するためには装置の精度だけでなく、ユーザーが測定条件を厳密に管理しなくてはいけないということです。


(参考)
土壌放射能濃度Bq/KgからBq/m2(平米)への換算

土壌採取方法は 文科省 0~5cm   農水省 0~15cm(圃場は耕作するから深め)となっていますが、どちらが正しいと言う問題ではなく使用状態、目的によります。(要は「同じやり方をしないとデーターの比較ができない」から)

文科省方式の換算式
汚染密度(Bq/m2)=採取深さ0.05m(5cm)×土壌密度(kg/m3)×土壌の濃度(Bq/kg) (土壌密度は1300 kg/m3 として計算)

例) 土壌放射能濃度が 6000Bq/ kgの場合

6000×0.05×1300=6000×65=39万ベクレル/平米

文科省の「65倍」は比重を1.3と想定しているが実測値が1.0の場合50倍と考えると
6000×0.05×1000=6000×50=30万ベクレル/平米

もう一つの方法は採取面積から計算するものでより精度が高い方法です。
例えば内径6cmの採土器を使用した場合

1回の採取面積は  3×3×3.14=28.3cm2 
 
5回採取したとすると総採取面積は
28.3×5=141.5 cm2

1回の採取重量は比重が1.0の時 28.3×5=141.5g
5回採取したとすると     141.5×5=707g 

この707gの土壌をよく撹拌しNaIシンチレーター、HP-Ge検出器で含まれるセシウム量を定量する

仮に707gで測定した土壌放射能濃度が6000Bq/kgであった場合
6000×0.707≒4242Bq が採取した土壌に含まれるベクレル量

放射能濃度をm2に換算するには
 (100×100)÷141.5=71 から
上記で定量したセシウム量を71倍すれば良いことになる
  

4242×71≒30万ベクレル/平米 

ただし、この方法を実施するにはコア・サンプラーなどと呼ばれる専用の採土器が必要ですが、いずれの方法でも体積(比重)を正確に測定することが重要です。

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