子どもを放射能からまもる会in千葉
終わりの見えない福島の原発事故。情報を集め、調べ、必要な声を上げて行こう

再びガイガーカウンターとβ線とのご質問について(その2)

その2といっても今回で終わらせますのでご安心ください。

計ったようなタイミングでSecurityTokyoさんがInspectorInspectorを2.6mm厚アルミ板で遮蔽しアロカの TCS-172Bと比較した映像をUPされています。

2.6mm厚アルミ板で簡易的に検出部を遮蔽したInspectorとALKOA TCS-172B:空間放射線量率 室内測定比較です。共にメーカー校正済みの測定器。
Inspector時定数3秒〜Auto。AOLKA時定数10秒に設定。
Inspectorの遮蔽はプラスチックボックスで全体を覆ってもアルミ板とほぼ変わらず。
Inspector機器協力:熊本県在住の方。
2012年8月8日 SecurityTokyo測定ラボにて比較測定録画。

いつもながら、ですが講釈なしコメント受付なしで「自分で考えろ」と言わぬばかりのポリシーには好感がもてます。

ざっくり見た範囲でInspectorは日立アロカTCS-172B(NaIシンチレーションγ線サーベイメーター)の倍程度の数値(線量当量)を表示しています。
もしかしてこの映像を見て「線量が高いのはβ線を検知しているから→やっぱりアルミホイル程度ではβ線は防げない→ほかの核種がある」という結論(解釈)になる方もおられるかもしれません。
SecurityTokyoさんのラボがガイガーカウンターでも拾えるくらいβ核種?で汚染されているとは考えにくいのですが、その点を議論しても堂々巡りなので当方として考えられる要因を考察してみたいと思います。

(1)統計の問題

何回か説明してきましたが放射性物質の壊変は確率的現象なのでポワソン分布にフィットします。
贅沢を言えば「映像」よりデーター(cpm)が欲しいのですが、お願いする筋でもないので画面からInspectorの表示値を拾ってExcelに入力してみました。時定数=Autoというのが曲者でInspectorの表示値は厳密に独立したイベントとは言えないのですが、その点はご容赦ください。

Inspector表示線量の基本統計量
平均 0.082577465
標準誤差 0.002099695
中央値 (メジアン) 0.077
最頻値 (モード) 0.071
標準偏差 0.017692341
分散 0.000313019
尖度 -0.556147505
歪度 0.459593116
範囲 0.072
最小 0.053
最大 0.125
合計 5.863
標本数 71
信頼区間(95.0%) 0.004187709

平均で見るとアロカTCS-172Bより0.03~0.04μSv/h高めの表示ですが、引き算や、係数をかけて補正すれば「正しい」線量当量率(γ線)を求められるのでこれ自体は大した問題ではありません。

Inspector_hist.jpg

むしろソフトウエアかGM管の構造か原因は不明ですが統計的なゆらぎ以外に変動要素があるように見えます。
前述のようにInspectorの表示値は独立したイベントではないのでポワソン(正規)分布に必ずしもFitしないのですが、強引にInspectorの計数率(感度)を推定すると

平均   0.082577465
標準偏差 0.017692341 から

検出器が一定時間に検知するγ線の数が「ポワソン分布」にフィットすると仮定した場合、イベント数の平方根が標準偏差になるので(参考 A2700の検出感度の見積
0.082577465/(0.017692341^2)≒264[cpm/(μSv/h)] 

となり「普通のガイガーカウンター」の2.6倍、TCS-172Bの1/50程度の計数率ではないかと思います。

(2)パンケーキ型GM管のエネルギー特性


宇都宮泰様より、SIM-05装備会の準備でお忙しい中詳しいコメントをいただきました。
まずご紹介のあった(私も日頃参考にさせていただいていますが)GCC_001さんの記事から。

はじめてのInspector ~バージョンの違い、使い方、メーカーの信頼性とは


下の方に重要なことが書いてありますが読み飛ばしてしまう人がいるかもしれないので引用しておきます。

まず、マイカ窓を通じてγ線を捉えているということは、α線、β線も含まれているかもしれませんよね。そのことに対する注意喚起が第一。
次に、そもそもγ線はマイカ窓を通じて補足するものではなく、基本的にはGM管の金属などに反応したものを捉えます。正確に言うと、GM管周囲の鉛、銅、アルミ、ステンレスといった金属(サイドウォール)にγ線がぶつかります。すると、金属から電子(β線)がはじき出されます。これを捉えてγ線を検出したとし、γ線としてSv表示させます。

そんなγ線をマイカ窓を通じて捉えたらどうなるか。サイドウォールからだと60 keV~しか補足できませんが、マイカ窓だと10 keVという微弱なエネルギーのγ線も捉えることができます。いえ、「できてしまう」が正解です。その結果、予期せぬ数値をはじき出す可能性があります。

Inspector_ena.jpg
上図は同じくGCC_001さんの記事から引用した図版を当方で加工したものです。横軸(エネルギー Kev)が対数表示でわかりにくいのでCs137の662Kevを緑線で表示してあります。

このグラフからわかるのは

・Inspectorでのセシウム137の662KeV付近のエネルギー特性はほぼフラット
・200Kev以下の低エネルギー領域(特性X線)で大きく盛り上がっている(そのままでは過大評価)
・同じγ線でも側面(SideWall-金属部)から入射した場合とマイカ窓(EndWindow)から入射した場合では倍以上感度が異なる→パンケーキ型GM管には強い指向性がある

という事です。

β線が重金属の遮蔽に衝突するとより低エネルギーの制動X線(電磁波)が放出されますが、もしかして「遮蔽が効かない=計数が下がらない」あるいはInspectorでβ遮蔽でアルミよりプラスチックが推奨されるのはそのためかもしれません。(そういう意味では確かに線量当量率の測定にはあまり向いていない気がします。)
シンチレーション線量計では低エネルギー側をカットしたり補償回路でフラットな特性にしていますが、MrGammaの例(オレンジ色で囲った範囲)では150Kev以下をバッサリ切っています。

 線量計のエネルギー補償について(MrGammaとRadiの比較)

宇都宮様によると過去にはGM管で遮蔽の有無によりγ/βの計数比を測定して核種を推定することが行われていたそうです。ただしγ/β比が1:10の様な大きな値を取るのはランタンマントル(トリウム系列)以外には見受けられないようです。

秋月シンチ+dokuさんプリアンプ+ベクモニ0.97βによるマントル(γ線)スペクトル
Thorium_CsI.jpg
これ以上仮定を積んで細部について議論してもらちが開かないので提案ですが

「普通のガイガーとInspectorの表示が10倍違う」場所の土壌試料をご提供願えないでしょうか?

アロカのTGS-146Bでの計数率やEMF211γ線スペクトロメーターでのスペクトル測定などのデーターを採取し結果は全て公開、費用は送料もふくめ「まもる会」で全額負担します。(γ/β比の測定については宇都宮泰様にご協力をお願いしてみます)
「β核種」の判別は無理としても手立てを尽くせばあたりくらいはつくかもしれません。宜しくご検討ください。
またInspectorをお持ちの方でCs線源による計数率や遮蔽の確認をしてみたいという方もメールフォーム等から是非ご連絡ください。

〈参考資料〉
放射線分析計 環境放射能
科学館員の独り言 自作『GM管』(18)
         自作『GM管』(20)
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