子どもを放射能からまもる会in千葉
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再びガイガーカウンターとβ線とのご質問について

以前、ガイガーカウンターとβ線についてご質問をいただき、能力の範囲でお答えする記事を書きました。

ガイガーカウンター(β線)についてのご質問について

今回あらたに別の方から
(1)「インスペクターと普通のガイガーの計測値が、十倍も違うところがあるのですが、それは本当にセシウムのβとγを二回数えているだけ、もしくはGM管の種類の違いがあるからだけなのでしょうか?」

(2)「インスペクターは遮蔽しない状態でセシウム137にて校正取ってるから。遮蔽しないのが正しい測り方です。では他の機械よりぐんと高くなってしまった時はどう解釈すればよいのか。それは他の核種が混じっていると考えるべきでは?」

というご質問をいただきました。

インスペクターというのはS.E. International, Incが製造?しているガイガーカウンター 「Inspector Alert」もしくは
「Inspector +」を指すようで International Medcom社のInspector Alertすが、違いがよくわかりません。と同じもののようです。
装置のスペックはこちら

tumblr_lu40e70ul91ql56v1o1_500.jpg
上写真(OpenGeigerProjectのblogより借用)の右側がInspectorで使用されている「パンケーキ型」のGM管LND7317、真ん中が同じくLND社の712でいずれもβ線に高い感度を得るため一端がマイカ(雲母)など薄膜になっている「端窓型」と呼ばれるGM管です。

maika.jpg
(図版は全ベータ放射能測定についてより借用しました)
ただしマイカ膜や空気によってもβ線は減弱するので、β線の全てが検出できるわけではありません。
(ちなみにしらべルで保有している日立アロカのGM管サーベイメーターTGS-142Bも「端窓型」のGM管を使用しています)

上写真左側がRadex1503やSOEKS、SIM-05などに用いられている非常にポピュラーなGM管であるSBM-20で、他の2つのような「窓」が無く金属管で覆われているためβ線に対する感度が低いことが直感的に判ります。

従って「インスペクターと普通のガイガーの計測値が、十倍も違う」とすればGM管の構造によるものでβ線を検知している、していないの差だと考えて良いと思います。

このブログで何度も書いているので「またその話か」と怒られそうですが、β線を出すのはプルトニウムやストロンチウムだけでなく、現在関東地方で量の多少に関わらず土壌から必ず検出されるセシウム137も「β核種」のお仲間です。

Cs-137-decay.jpg

上の図は「壊変図式」といいますが、書きなおすと「Cs137(半減期30年)がβ崩壊して出来るBa137m (半減期2分半)がγ崩壊して安定な物質Ba137になる」という事です。

Cs137 →β線 514KeV(94.4%)1180KeV(5.6%)
                  ↓
                  Ba137m(※)→γ線 662KeV(85.1%) 

※m=metastable state

ちなみにK40(カリウム40)はβ線とγ線を同時に放出している珍しい?核種です。

40-decay.jpg

(壊変図はいずれも.wikimedia.commonsより)


ただしβ線(荷電粒子)のエネルギーはγ線の様に固有のピークを持つのではなく下図の様にエネルギーの最大値Emaxが核種ごとに固有の値を取りEmax の1/3付近にブロードなピークを持つようです。
011.gif


では「β線を検知した=他の核種がある」という等式は成り立つのでしょうか?


ガイガーカウンターはセシウム-137のガンマ線に強く反応した!


この動画ではCs137 の標準線源にアルミ板を介した時と直接Inspectorをのせてカウント数(単位がcpmというのが重要です)※CPM=count per minute

遮蔽なし 1800cpm
遮蔽あり 800cpm


と約2倍の差がありますが、実験者の意図どおりに解釈すればこの増分は未知の核種によるものというよりCs137のβ線によるものと考えるのが合理的です。しかし「約2倍」にはなりましたが「10倍」にはなっていません。
ところで「普通のガイガーカウンタ(Radex1503やSOEKS)には改造でもしないかぎり「CPM表示」はできませんから、「μSv/h」表示で比較したということだ思います。

このブログでも秋月(サンゴバン製)シンチレーターを使用した「なんちゃって線量計」を試作しましたが、要は1cm線量当量(μSv/h)はγ線をカウントして適当な換算係数を掛ければよいのですが、これは「お約束」なので好き嫌いの問題とは違います。

もしInspectorが「遮蔽しない状態でセシウム137にて校正」しているとしても空気でも減弱するのでβ線がスカスカの地表1m高さで線量当量(μSv/h)を測定しているうちは大きな問題は起こさないかもしれません。

ただし地表(直置き)など線源に密着させ測定する場合はcpm表示で値を読む必要があり、その時他の機種の線量当量表示と比較しても何の意味もない事はご理解ください。

(Inspectorは以前取り上げたRADEX1008TERAあるいはPripyat、さらにDP-5Vの様にプレートの着脱や「γ-Mode」「β-Mode」を明示的に切り替えていないので混乱が生じているのかもしれません)

 ガイガーカウンターでのβ線測定時の誤った表示について

「アルミホイル程度ではβ線は遮蔽できない」というお話もうかがいましたが、別に金属でなくてもEmax1.1MeVのβ線を阻止するなら4mmのプラスチックで十分なようです。
beta_shield.jpg

しらベルの日立アロカのGM管サーベイメーターTGS-146Bを使った実験ではタッパウエアのふた(ポリエチレン製2mm程度)でもカリウム40が放出する1310KeVのβ線を1/2に減ずる遮蔽効果がありそうです。

 アロカのGMサーベイメーターが測定室に納入されました

あとInspectorに特化した情報はこちら
純正のWipeTest Plateを付けてみました
アルミのβ線の遮蔽は1.5mmで良い
銅板によるβ線の遮蔽(アルミ板とどう違うか?)

逆に言えば2mm程度のプラスチックケースのガイガーカウンターをβ線源に近づけ、アルミホイルの巻き数を変えてカウント数をモニターすれば最大エネルギー=核種をある程度?推定できるかもしれません。

核種判別について

以下完全に余談ですが下図はCs137標準線源に自作の秋月シンチレーター+プリアンプとSIM-05(GM管ガイガーカウンター)を近づけた時のそれぞれの外部出力をAudacityで録音したものです。(上がシンチ、下がGM管)
CsI_SIM05_Cs.jpg

γ線を検知するごとにパルス信号が出力されるので信号の時間密度は計数率の違いです。
シンチ(上段)の場合はパルス信号の高さとγ線のエネルギーには一定の比例関係がありますが、GM管の場合は一定の高さのパルスが出力されエネルギー(核種)の情報は失われています。
ただしシンチレーション線量計でも(赤い補助線をいれましたが)「あるレベル以上の信号だけを数える」計数管モードでは結果としてGM管と同じ動作になります。
(GM管でも印加電圧を下げて比例係数モードで使用できないか、というのは非常に興味のある話ですが脇道にそれるのでいつか別建てで考えたいと思います)

「えっ、ちょっと待て。Cs線源(662Kev)を測定しているはずならピークの高さは揃うはずだ」と疑問に思う方もおられるかもしれません。

下図は秋月シンチ+プリアンプでCs137標準線源のスペクトルをとったものです。
(下の黒い部分がバックグラウンド)
Cs_RefvsBG_S.jpg

Cs137(662KeV)のピーク以外にも低エネルギー側の盛り上がりが見えますが、散乱線(コンプトン端らしきものもの?も見えます)によるもので「別の核種」が湧いてでたわけでありません。

線量計はこうした散乱線も含めてカウントして計数率を稼いでいるのですが、検出器のエネルギー特性はフラットではありません。
特に低エネルギー側でのレスポンスや機種ごとのプラスチック筺体(ボディ)の厚みや実装方法、GM管の個体差の影響も受けるので「Cs線源で校正しているから数値が上がれば他の核種」と思うのは端的に間違いだと思います。

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