子どもを放射能からまもる会in千葉
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千葉市が使用している食品検査装置について

(1)NaI(Tl)シンチレーション検出器を使った食品検査
千葉市の給食の放射能検査についてはコメントやメールをいただきました。ミヤギさんから装置の情報をいただきましたが、食品の放射能検査については、調べてはいましたが中々難しいのでまとめ切れていません。間違いなどあると思いますがご指摘いただければ幸いです。

厚労省の「緊急時の食品検査マニュアル」のなかに
「 NaI(Tl)シンチレーションサーベイメータによる放射性ヨウ素の測定法」というくだりがあります。
日立アロカのTCS-172Bの様なNaIシンチレーションサーベイメーターを食品検査に流 用する場合、空間線量(線量当量率)の測定を目的に校正した数値をそのままベクレル量に変換できません。

ALOKA

(写真は千葉市が使用している装置と同型のシンチレーションサーベイメータ―で本体と検出部(プローブ)にわかれています。)

そこで上記の手順では放射性物質を水で溶解して実際に使用する容器を使って校正するか、現物で校正できない時は「バックグラウンドとの差が20%の時有意」(汚染有り)としてい ます。

この場合は全てヨウ素131換算で数値を出しますが  セシウムの場合は
日本アイソトープ協会が主なNaIシンチ線量計を食品の放射能検査(セシウム量)に使用した場合の換算係数を公開しています。

緊急時における食品中の放射性セシウム測定に用いるNaI(Tl)シンチレーションサーベイメータの機器校正ver.2 [348KB]

報告会の資料で触れましたが千葉市が購入し、現在食品検査で用いている装置もこれに準じているはずです。

この場合も実際に使用する容器にCs-137溶液を入れて校正用の線源とするか線量計の表示する線量率か計数率を機種ごと、容器毎に実測値から求めた換算係数(Bq/kg/μSv/h または Bq/kg/cps)を使ってしセシウム量を計算(推定)するということです。
右下図はマリネリ容器を使用した場合の検出器との位置関係marine.png 

測定の前に試料、プローブ(検出器)全体を鉛で遮蔽し空間線量の影響を受けないようにしてバックグラウンドを可能な限り下げる必要があります






まず空か蒸留水を入れたマリネリ容器を遮蔽容器に入れ、数時間動かしてバックグラウンド線量を測ります。
(ゲルマニウム半導体検出器の場合はバックグラウンドの測定に2週間くらいかけるそうです。)

その後に試料を入れたマリネリ容器を測定して数値を読みます。(検出限界を低くするほど時間がかかります。)
その結果から

(試料ありの時の測定値―バックグラウンドの測定値)×換算係数=試料のベクレル量(Bq/kg) を求めます。

逆に下表から TCS-171(B)の2Lポリビン先端5cm液中での換算係数 1.92E+04「Bq/kg/(μSv/h)]を使って67Bq/kgの食品を検査した場合の測定値の差分は
67÷19200≒0.0035[μSv/h]  になると思います。(つまり食品検査では通常の空間線量の測定値よりさらに小さな値を問題にしています。)
アロカのNaIシンチの換算係数
換算係数
容器試料重量TCS-172BTCS-171B
2Lマリネリ容器2kg7.11E01[Bq/kg/cps]2.45E+04[Bq/kg/(μSv/h)]
2Lポリビンタイプ先端5cm液中2kg6.78E01[Bq/kg/cps]1.92E+04[Bq/kg/(μSv/h)]

日本アイソトープ協会の文章では「測定ジオメトリ」という??な専門用語を使っていますが、要は線量計の検出器の形状、大きさとと容器の形状、大きさによる位置関係(幾何的関係)が変わると換算係数も異なると考えて良いと思います。(試料の密度も関係しますがとりあえず無視して考えます)

容器の形状大きさについては
放射能測定シリーズ No.7 ゲルマニウム半導体検出器によるガンマ線スペクトロメトリー
7.1 試料容器  を参照してください。
   
実は以前の記事で「やさしお」を詰めたタッパウエアに線量計を置いて「あり、なし」の差を見ましたが原理的には同じ事をしているわけです。「やさしお」の場合8730Bq/kgのカリウム40が試料なので遮蔽なしでも0.0022μSv/hの差が読み取れるのですが、A2700でセシウム137で500Bq/kg相当だとバックグラウンドとの差が0.001μSv/h程度になり遮蔽をしても検出するのはかなり難しい、ガイガーカウンターではまず無理だと思います。

まとめると 検出限界を下げる(精度を上げる)には
1.遮蔽をしっかりとする。(鉛で5cm以上)
2.感度の高い検出器を使う(検出器NaI(Tl)結晶のサイズが大きい方が有利、φ3×3inchくらいほしい)
3.誤差を少なくする(測定時間を長くする)


ということになります。多分千葉市が使用している検査器は簡易測定器を流用したものなので限界がありますが、NaI(Tl)シンチレーション検出器で食品検査ができないわけではありません。

以前の記事で紹介した「大地を守る会」ではNaIガンマ線スペクトロメーターを実際の検査に使用していますが、柏市が国の補助金で購入したものと同型で、検出限界は10Bq/kgだったと思います。(NaI(Tl)結晶のサイズはφ3×3inch 遮蔽部は5cm厚鉛で重量約200kg 下の写真で男性が持っているのが検出器で台車に乗っているのが鉛の遮蔽容器です。)

NaI

大地を守る会の放射能測定について

EMF211型ガンマ線スペクトロメータ

こうした装置では感度が高いので測定時間が短くなるのと試料が少なくても同じ精度で測定できます。
(感度が低いと2kg中の200ベクレルは検出できても500g中の50ベクレルは不検出になるかもしれません)

千葉市の装置では2kgの検体が必要ですが食品検査の試料は千葉市の「買取り」なので、比較的高価(といっても給食ですが)なものは検査の頻度が落ちますし、前処理に時間がかかるものが多いと検査品目が少なくなってしまいます。(たぶん栗などは歩留まりを考えて余分に買って2kg分皮を剥いていると思いますが、試料を作るだけで大変な手間になります。)

長くなったので、核種の判別については別記事でまとめます。

(by otto)




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Comment

皆様に誤解を与えてしまったならすいません。
NaIシンチレーションで物体線量が測れない、と言うわけではなく、測り方の問題、と言いたかったのですが。
食料品を粉砕して、通常の部屋でサーベイメーターを当てるだけの測定で確認した!と言ってほしくないだけです。
食料品は名前の通り食べる事により体内に取り込んでしまうのもなので、安易な測定をしてはなりません。
特に、自治体など信頼ある機関(今はあるかどうかは?)が測定値を発表する場合は、きちんと測定の仕方まで公表するべきと思います。
千葉市のように安易な説明公表をするからこのような混乱が起きると考えます。
そもそも、食品の線量計測が難しいのは核種の選別とバックグラウンド線量による誤差の問題で、その辺で手に入れられるサーベイメーターでは正確な測定が出来ないので心配する声があることを理解するべきです。
こういう検査を行ったから安全、ではなくて安心する為にはこういった検査が必要だ!を考えるべきです。
ただし、食料品は鮮度や加工の問題もあるので、測定に時間をかける訳にもいかずジレンマもあるのですが・・・。
我々は専門家ではありませんが、そのような一般人に突っ込まれるような検査説明じゃ、より不安を与えるだけです。
この問題は、ウェザリング効果や除染を考えても、何十年と続く問題です。
最初のボタンを掛け違えては、大問題になると考えています。。
その誤解を招かない為にも、キチンとした説明や写真の公開等もして頂きたいと思います。
長々と長文失礼致しました。



2011.10.07 16:30 | URL | ミヤギマサユキ #- [edit]
Re: タイトルなし
ミヤギさん、コメントありがとうございます。
> 皆様に誤解を与えてしまったならすいません。
> NaIシンチレーションで物体線量が測れない、と言うわけではなく、測り方の問題、と言いたかったのですが。

いや誤解は与えていないと思います。私もおっしゃっている事には同意です。精度を取るか、検体数を増やすかは非常にむずかしい問題だと思います。ただ千葉市の「簡易装置で測って2カウントしたら外部機関でゲルマニュウム半導体にかける」というのは、非常に不合理で、精度と検体数のどちらも満足していないと思います。
記事にも書きましたが千葉市の対応は完全に出遅れで、核種判別のできるNaIシンチ測定器は農水省や多くの自治体が発注をかけていて納期が全く判りません。非常に困った事態です。
2011.10.07 20:20 | URL | otto #- [edit]

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